[Motion][News]The Louis Vuitton 38th America’s Cup
王座を懸けた世界最高峰のヨットレース――第38回アメリカズカップ、新時代の幕開け
第38回アメリカズカップ――海と風と熟練の技術が織り成す世界最高峰のヨットレースは、2027年夏、イタリア南部の古都ナポリの海を舞台に歴史的な新章を刻もうとしている。世界最古の国際スポーツトロフィーとして知られるアメリカズカップは、その創設以来175年にわたり、ヨットとチームの卓越した技量、そして国家間の栄誉を賭けた戦いとして輝き続けてきた。世界が注目する次回大会の構造、背景、そして参加チームの展望を紹介する。

歴史と伝統、そして改革
アメリカズカップは1851年に初めて開催され、以来世界のヨットレースの象徴的な存在として君臨してきた。名誉ある“アメリカズカップ”トロフィーを巡る戦いは、単なるスポーツイベントを超え、各国の造船技術、戦術理論、そして海洋への挑戦精神が結晶する場である。最先端のフォイリング艇による高速レースは、「海上のF1」とも称され、観衆を魅了してやまない。

その第38回大会は、単に伝統の継承に留まらず、大きな制度改革の時代に位置付けられている。大会運営の新たな枠組みとして、「アメリカズカップ・パートナーシップ(ACP)」が新たに創設され、全ての参加チームがガバナンスと商業的権利を共有する構造が採用された。これは競技の持続可能性と公平性を高める試みであり、175年の歴史において「最も大胆な転換」と評されている。

ナポリ――歴史と革新の海へ
第38回大会の開催地は、イタリアのナポリ湾。古代ローマ時代から海洋都市として栄え、歴史と文化が交差するこの街は、今や世界のヨットファンの注目を集める舞台となっている。大会は2027年7月10日に開幕し、17〜18日の週末に決着がつく予定である。海上には活気溢れる観客、そしてVesuvio(ヴェスヴィオ火山)を背景に、高性能AC75フォイルヨットが、時速100km近いスピードで疾走する光景が描かれる。
この大会では、チームは1隻のAC75艇を建造または継承し、5名のクルーで挑む。電池駆動の機能を持つ最新鋭艇のデザインと操作技術は、これまでの常識を覆し、戦術的判断が勝利を分ける鍵となる。

参加チームの紹介
現在、第38回アメリカズカップには以下のチームが主要な参戦勢力として確認されている。エントリーの締切は2026年1月末まで延長されており、今後新たな動きがある可能性もあるが、現時点で世界中のヨットファンが注目する顔ぶれは以下の通りである。
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● エミレーツ・チーム・ニュージーランド(Defender)
大会防衛者として君臨するニュージーランド代表は、近年のアメリカズカップで圧倒的な強さを見せ、競技の最前線を牽引しているチームである。技術革新とチームワークの結晶として名高く、堂々たる防衛戦を展開する。
● GB1(Challenger of Record)
英国を代表する挑戦者チームで、従来「アテナ・レーシング」として活動してきた艇団が新たなアイデンティティを打ち出した。歴史と伝統を誇る英国帆船文化の正統な後継者として、挑戦の旗を高く掲げている。
● ルナ・ロッサ(Luna Rossa)
イタリア代表のルナ・ロッサは、過去の大会でも常に決戦の舞台に立ち続けてきた名門チームである。近年はニュージーランド三連覇の影にあって苦戦も見せるが、国内での開催となる今回、地元の声援を背に大きな飛躍を目指す。元ニュージーランド代表スキッパーのピーター・バーリングがチームへ加わることも話題となっている。
● チューダー・チーム・アリンギ(Tudor Team Alinghi)
スイス代表のアリンギは、過去2度のアメリカズカップ制覇経験を持つ伝統的強豪だ。革新的な戦術と組織力で、再び覇権奪回を狙う。
● K-チャレンジ(K-Challenge)
フランス代表として国際舞台に挑むチームで、技術と戦略を融合したレース運営が特徴。ACPの一員として、伝統競技の未来を切り拓く役割も担う。
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アメリカ代表「アメリカン・マジック」の参戦も想定されていたが、2025年10月になって同チームは経営と戦略上の理由から今大会への不参加を表明している。これはアメリカズカップ史上初めて米国勢が不在となる可能性を示唆するものであり、国際競技としての新たな潮流を象徴している。

結び
海を舞台に繰り広げられる第38回アメリカズカップは、伝統と革新が融合した壮大なドラマである。ナポリの空の下、世界最高峰のヨットチームが技術と意志を競う姿は、21世紀のスポーツ史に新たな1ページを刻むだろう。観衆は風と波が織り成す航跡に熱狂し、歴史的瞬間の目撃者となるに違いない。
Largesseでは、来たる2027年の本戦まで、世界最高峰のヨットレース、アメリカズカップの詳細ををレポートしていく。なぜなら、そこにはラグジュアリーのなんたるかが、びっしりと詰まっているからだ。
Photos ©︎America’s Cup